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株式会社22世紀アート 取締役副社長・出版企画部 部長 海野 有見 / 執行役員・制作部部長 斉藤 孝之 / 執行役員・出版企画部 野沢 光昭株式会社22世紀アート 取締役副社長・出版企画部 部長 海野 有見 / 執行役員・制作部部長 斉藤 孝之 / 執行役員・出版企画部 野沢 光昭

おもしろくない本なんて、世の中にない。
その人にしか書けない物語が、
必ずあるはずだから

多くの人に読まれる可能性を広げるために、
電子書籍での創作をあと押ししたい
出版プロデューサー
株式会社22世紀アート
取締役副社長・出版企画部 部長
海野 有見

紙の形態で自費出版した本を、電子書籍化して再び世に出す。異色の取り組みを行う出版社として注目を集める22世紀アート。当初の出版時よりもクオリティを高め、さらに多くの読者へ届けている。同社の創業時からのメンバーとして、著者となりえる人財を探し、電子書籍を上梓するまでのプロセスの第一線に立ってきたのが海野だ。新たな価値を生み出し続けている海野の仕事観に迫った。


「22世紀アートの海野さんに連絡をして、この原稿を出版してもらうように──と、主人の遺言に書いてあったんです」。ある学者の奥さんから、海野へ電話があった。以前、学者が書きためていたエッセイを出版しようと、海野と二人三脚で推敲を重ねた経緯があったのだ。「もう少し、手をくわえてみる」という、最後のFAXの連絡があってから、3年ほどが経過していた。学者の遺言には、海野に託す、最期の願いが記してあった。

 左々正治さんという大学の文学部の先生です。電子書籍化するべき本を探すために行った国会図書館で、先生の論文を拝見して。お電話で、「ぜひ電子書籍化させてほしい」というご相談をしていたんです。論文でありながら、先生の純粋な人柄が感じられる文章だったので、興味をひかれたんですね。

 先生は、「論文を本にするつもりはないけれど、日常をエッセイにしたものなら考えたい」と、おっしゃいました。送っていただいた草稿を拝読して、内容はとてもすばらしい。「ぜひ、出版させていただきたい」と。ただ、「文章の構成を変えたり、ほかの著作物からの引用のやり方を正すなど、出版するためには手直しするべき点がある」と伝えました。そして、先生と私の間で、原稿の推敲のためのFAXのやりとりを3ヵ月くらいさせてもらったんです。

 A4のFAX用紙がファイル2冊分ぐらいにまでなるほど、やりとりを重ねたんですが、先生が満足するものには仕上がらなかった。完成までさらに時間がかかりそうだったことから、そのときは電子書籍化の契約にはいたらず、先生のほうで「もう少し手直しする」という連絡を最後に、やりとりは終わったんです。それから3年ほどがたち、先生の訃報が……。そして、奥さんからいただいた連絡が、「この原稿を海野さんに託して出版してほしい」という遺言だったのです。

 原稿を拝見すると、きちんと時系列にまとめられていて、そのまま書籍にできるくらいの完成度。見事なエッセイができあがっていました。3年の間にずいぶんつくりこまれたことがわかって、本当に感慨深かった。そして、ほぼ手を入れることなく、そのまま電子書籍として出版させていただくことができたのです。

 私に託されたこの貴重な本を多くの読者に広めることで「先生は、天国で喜んでくださっているかな」と思います。

「22世紀アートの海野さんに連絡をして、この原稿を出版してもらうように──と、主人の遺言に書いてあったんです」。ある学者の奥さんから、海野へ電話があった。以前、学者が書きためていたエッセイを出版しようと、海野と二人三脚で推敲を重ねた経緯があったのだ。「もう少し、手をくわえてみる」という、最後のFAXの連絡があってから、3年ほどが経過していた。学者の遺言には、海野に託す、最期の願いが記してあった。

著者の想いをカタチにする、海野の仕事。彼女があつかう書籍は、あらゆるジャンルにわたっている。「特定のカテゴリーしか出さない、あつかわないというのは、出版社のエゴだと思っている」と彼女はいう。よほど難解なものでなければ、ジャンルにはこだわらないのが22世紀アートの方針だ。そこには、海野が大事にする出版に対する考え方がこめられているという。

 “おもしろくない本って、世の中にない”と思っています。もちろん、ベストセラーになる本はひとにぎりですけど、「どこかの誰かにとってのおもしろい1冊」になら、きっとなれる。その人にしか書けない、固有の世界や物語が必ずあるはずですから。

 だからこそ、一生懸命に書いたものがあるのなら絶対に世に出すべきですし、多くの読者に届けるべき──という想いが、私にはずっとあります。もし、少しでも出版に興味をもっていたり、私の意見が必要な作家さまがいらっしゃるときは、可能性をゼロにしてあとで後悔されないよう、全力であと押しすることが私の役目です。

 これまでの紙による出版という表現方法には、制作コストが高かったり、流通させるのが大変だったり、難しい問題がありました。それを乗り越える画期的な方法こそ、電子書籍というカタチなんです。紙のカタチで売れなかった本であっても、電子化すれば読まれるケースは多い。

 自費で書籍を出版された作家さまのなかには、「紙の本で出したけど売れなかったから、電子書籍はやらない」という方もたくさん、おられます。でも、心の底から「このまま読まれなくてもいい」とは、どなたも思っていません。だからこそ、こんどは失敗させない。22世紀アートを信じてもらいたいんです。22世紀アートでは、1冊の書籍を出版するために、代表、出版企画部、編集部、制作部、デザイン部、SOCIO編集部など、それぞれの役割をもつ、とてもユニークなメンバーが意見交換をしながら進めていきます。だからこそおもしろい本ができるということをわかっていただきたいんです。作家さまに私たち22世紀アートのことを信じてもらうことも、私自身をはじめ、出版企画部の仕事だと思っています。

著者の想いをカタチにする、海野の仕事。彼女があつかう書籍は、あらゆるジャンルにわたっている。「特定のカテゴリーしか出さない、あつかわないというのは、出版社のエゴだと思っている」と彼女はいう。よほど難解なものでなければ、ジャンルにはこだわらないのが22世紀アートの方針だ。そこには、海野が大事にする出版に対する考え方がこめられているという。

海野が著者に電子書籍化の声をかける対象を見つけるパターンはいくつかある。社内の調査部があげてきたリストにそって、自ら国会図書館に足を運び、内容を見てアプローチするケースや、新聞などの書籍広告を見て、「おもしろそうだ」と感じて声をかけるケースなどがあるという。いずれも、海野自身の感性を信じてアプローチする。そこで著者に信じてもらうための工夫などはあるのだろうか。

 私たちの場合、信じてもらう工夫は、正直ないです。自費出版をされている作家さまは、「とにかく本に対してひたむき」という印象をもっています。営業トークのようなうたい文句は、まず通用しません。ただただ「電子書籍化したい、このままでは絶対にもったいない」という本心を、ストレートにぶつけています。あとは、作家さましだいですから、祈るのみです。いたってシンプルな流れです。

 とくに自費出版は、作家さまとの信頼関係がすごく大事だと感じています。売れるだけではダメなんです。作家さまが書きたいものがカタチとなって、社会に評価されることがいちばん大切なんです。つまり作家さまの本当に書きたいものがなにかを深く理解しなければ、信頼もされず、こちらの提案も通りませんので、たとえ出版してもうまくいきません。だからこそ、ご契約の提案時に作家さまがなにを発信したいのかを深く理解したうえで、信頼してもらう、それにつきます。

 作家さまの願いは、十人十色です。売りたい人、伝えたい人、残したい人、認められたい人、それぞれのかなえたい思いによって、本の作り方も当然変わります。

 ですから、信頼してもらうことができなければ、契約していただいてもうまくいきません。出版企画部は、とにかく探し続ける。そして信頼していただき、ご契約いただいたら売れるまで真摯にねばり強く作家さまとともに歩んでいく、という感じなんです。

海野が著者に電子書籍化の声をかける対象を見つけるパターンはいくつかある。社内の調査部があげてきたリストにそって、自ら国会図書館に足を運び、内容を見てアプローチするケースや、新聞などの書籍広告を見て、「おもしろそうだ」と感じて声をかけるケースなどがあるという。いずれも、海野自身の感性を信じてアプローチする。そこで著者に信じてもらうための工夫などはあるのだろうか。

表現者として創作したものを、少しでも多くの人に見てもらいたい。そんな想いが、海野の原動力になっている。そうした想いが形成されたのは、22世紀アートの創業に参画し、出版プロデューサーの道を歩みだす以前にさかのぼる。彼女はもともと、同じ表現者でも、文学の世界の作家ではなく、絵の世界の作家とかかわる仕事をしていたという。

 画廊や、展覧会を運営する会社で働き、絵を描くことを生業にしている多くの画家さんとお仕事をしてきました。そのなかで、本を書いている作家さま以上に、絵を描いている作家さまが売れないことを目の当たりにしてきたんですよ。ほんとうに、絵は売れない。プロになれる画家は少ない。そういう姿をずっと見てきたので、「作家さまになにかお返しできる方法はないか」と、ずっと考えていました。

 そして、「出版ならば、作家さまに還元することが可能である」と気づいたんです。絵が売れないのは、一般のご家庭では、家のなかに絵を飾る習慣がないことも一因。でも、みなさん本棚はおもちなんです。ですから、絵は買わなくても、画集にしたら買ってくださる。

 さらに、電子書籍であれば、より低コストで画集を制作し、ほしい方にお届けできます。紙の画集を出すとなると、カラー印刷の大型本をつくらなくてはいけないので、多額のコストがかかります。そんな大型本を書店で購入して、家にもち帰るのも大変。電子書籍なら、そんな制約はまったくなく、たくさんの人の目に触れさせることができるんです。

 出版業に携わるようになって、主としてかかわる方が、絵描きさんから物書きさんに変わったいまも、絵は好きですよ。でも、絵そのものを売りたいわけじゃない。絵を描いている作家さまが好きなので、「作家さまが喜ぶことをしたい」という気持ちが強い。作家さまが自身の想いをカタチにしたものを、ひとりでも多くの人の目に触れる機会をつくりたいんです。それは、絵以外の表現をしている方であっても同じで、いまの自分の根幹となっている部分ですね。

表現者として創作したものを、少しでも多くの人に見てもらいたい。そんな想いが、海野の原動力になっている。そうした想いが形成されたのは、22世紀アートの創業に参画し、出版プロデューサーの道を歩みだす以前にさかのぼる。彼女はもともと、同じ表現者でも、文学の世界の作家ではなく、絵の世界の作家とかかわる仕事をしていたという。

どこまでも作家本位の姿勢を貫き続ける海野。彼女は「作家さまのよさを活かしたいから、原稿にはほとんど手を入れずに出版している」ともいう。あくまでも、作家を応援する存在としての価値をとことんまで突きつめていくのが海野流。だから、海野は自分の会社を「出版社ではない」とまで言うのだ。

 私は、22世紀アートについて「出版社」という意識はあまりないです。出版は、作家さまが伝えたいことをカタチにしていくひとつの手段にすぎない──と考えています。とにかく作家さまには、伝えたいことをどんどん発信していってほしい、そしてその先にある新たな夢をもっていただきたい、可能性を感じ喜んでいただきたい。そのことが、私が仕事をしていくうえでいちばん大事な要素だと思っています。

 最近は、作家さまに限らず、人の願いに終わりはないのだと感じています。「出したい」から「売りたい」に変わり、さらに「もっと売りたい」「コラボレーションがしたい」「小説に挑戦したい」「動画を撮影して配信したい」…。そういった次々にわきあがる想いに真摯に向き合いながら、怒ったり怒られたりしながら二人三脚で進んでいくことで、キズナができていくんです。一緒に山を登っていくような感覚でしょうか。そうやって、ご満足いただき、「次作も一緒にがんばろうか」といってくださった瞬間などは、ひとつの山の頂上をきわめたような達成感がありますね。

 まずは、作家さまが自身で書いた書籍に確固たる自信をもっていること。そういった本ならどんどん世に出していきたい。そして、より多くの作家さまとの信頼関係をさらに高めていきたい。お一人おひとりの作家さまに喜んでいただけるよう、これからも想いを込めた仕事をしていきたいですね。

怒ったり怒られたり。
二人三脚で進むなかで、
作家さまとのキズナができていくんです

海野 有見(うんの ゆみ)
海野 有見(うんの ゆみ)
海野 有見(うんの ゆみ)
プロフィール

1981年、静岡県生まれ。アート業界を経て2014年、株式会社22世紀アートの立ち上げに参画し、出版企画部の最前線で活躍。小説、エッセイなどの文芸作品、絵画、写真などのアート作品など、あらゆるジャンルの書籍、電子書籍のリリースに携わってきた。現在は取締役副社長として少しでも多くの人に文芸やアートの魅力を伝えることをめざし、作家の想いを具現化すべく業務に邁進している。

株式会社22世紀アート 取締役副社長・出版企画部 部長 海野 有見 / 執行役員・制作部部長 斉藤 孝之 / 執行役員・出版企画部 野沢 光昭株式会社22世紀アート 取締役副社長・出版企画部 部長 海野 有見 / 執行役員・制作部部長 斉藤 孝之 / 執行役員・出版企画部 野沢 光昭

作家さまの想いを
あくまでもかなえ続けるのが、
自費出版社としての覚悟です

私は作家さまの“あふれる想い”が
好きで好きで仕方ありません。
書籍コンサルタント
株式会社22世紀アート
執行役員・制作部部長
斉藤 孝之

設立から5年間で、22世紀アートが出版した書籍・電子書籍の数は、すでに1,000冊を超え、現在は、月に50冊ペースで書籍を出版している。同社の制作部門をあずかる責任者として、数々の名著を生み出してきたのが斉藤孝之だ。現在も制作部部長の立場として、出版というジャンルを超えた新たなサービスの立ち上げをめざす。そんな斉藤に、22世紀アートでの仕事の特色を聞いた。


出版社としての22世紀アートの大きな特徴のひとつとして、おもに自費出版を手がけていることがある。著者が費用を出し、出版する形態だ。出版社がすべての制作費用を負担する商業出版との対比で、いちばん大きな違いはなんだろうか。斉藤に解説してもらうと──。

 セールスを重視するか、作家を重視するかが大きく違うと思います。これは、資本の構造上からいっても明らかです。単純にどちらがいいか悪いかではなく、どちらにもメリット、デメリットがあります。商業出版としてセールスを意識すれば作家の想いがおろそかになり、自費出版として作家を重視するとセールスがおろそかになる。電子書籍という低コストの出版形態によって、両者の中間をいくのが当社のスタイルです。

 また、自費出版の作家さまのなかにも多様の考えが存在しています。たとえば「やりたいように出版する人」「商業出版の声がかかることをめざして出版する人」「自らの出版社をつくって出版する人」「執筆業に生活の基盤を置くことなく作家として活動する人」「専門的な執筆は商業出版、趣味で執筆しているものは自費出版する人」「仕事のプロモーションの一環として出版する人」などなど。作家活動のあり方や目標は作家さまによって大きく異なります。

 ですから、作家さまが、これまで生きてきた時代になにを感じ、なにを伝えたいのかのほかに、「なにを目標に執筆しているのか」ということについて、その一端を探り、全体を理解するまでの作業が、これからの自費出版業界にとって、とても重要なことなのではないかと考えています。それによって表紙や装丁、宣伝も大きく異なっていきますから。

出版社としての22世紀アートの大きな特徴のひとつとして、おもに自費出版を手がけていることがある。著者が費用を出し、出版する形態だ。出版社がすべての制作費用を負担する商業出版との対比で、いちばん大きな違いはなんだろうか。斉藤に解説してもらうと──。

著者の想いをかなえ、書籍というカタチにすること。「本を出す」という行為は、従来であれば相当にハードルの高い作業だった。それを可能にしたのが、電子書籍という手法の登場である。電子書籍専門の出版社として、22世紀アートは制作や流通、マーケティングなどにおいて多くのノウハウをたくわえている。

 紙で出版する場合、紙・印刷・製本などのコストが生じ、自費出版でペイするのは非常に難しい。また、出版流通の仕組みは独特で、書店の棚に置いてもらうまでに高いハードルがあり、「置き続けてもらう」となると、さらに難しいんです。その点、電子書籍であれば制作コストを圧倒的に安価にできますし、複雑な出版流通の仕組みに乗せる必要もありません。書籍販売のためのWebサイトで“売り続ける”ことができる。ですから、「絶版」という概念がないんです。これは大きいです。作品が長く愛される可能性も、作家さまの想いをかなえられる可能性も無限大に広がっていくのが電子書籍のメリットです。

 22世紀アートの場合、作家さまが出版停止を希望されない限り、出版し続けるわけですから、私たちと作家さまとのつきあいが、非常に長くなります。そして、作家さまへのSNSの立ち上げ・運営のサポートやYouTube動画配信、各メディアへのプレスリリース配信、HPの立ち上げ・運営サポート、表紙Tシャツの作成など、作家さまと私たちでアイデアを出しながら協力して販売活動を続けています。

著者の想いをかなえ、書籍というカタチにすること。「本を出す」という行為は、従来であれば相当にハードルの高い作業だった。それを可能にしたのが、電子書籍という手法の登場である。電子書籍専門の出版社として、22世紀アートは制作や流通、マーケティングなどにおいて多くのノウハウをたくわえている。

電子書籍のつくり手として、豊富な実績をもち、さらにITメディアの分野を切り拓いている斉藤。しかし、じつは22世紀アートに入社するまで、書籍や出版、ITについての知識は少ないほうだったという。現在の出版業界に入る前、15年間にわたって音楽業界に身を置いていたというのだ。

 もともとは音楽業界の出身です。その後、独立。海外のアーティストを日本にプロモーションする仕事を手がけていました。しかし、アーティストのサポートを個人でやり続けるなかで、しだいに要求されることが多くなり、個人でサポートすることが非常に難しくなっていきました。そんなとき、音楽業界時代の知人を介し、音楽業界、芸術業界に広くコネクションを持つ当社代表の向田と知り合いました。「自費出版の概念を変え、共益性の高い執筆活動の支援をしたい」という向田の想いに共感し、22世紀アートに参加したんです。

 彼は、「作家さまの“自分の作品を世に出したい”という想いをかなえてあげたい」「それを読みたい、見たいと思っている人は、世の中に必ずいる」と熱く語ってくれたんですよ。

 以来、それが私自身の想いにもなっています。最近、よく思うんです。私がこれまでにやってきたことは、同一線上でありながら規模が大きくなり、進化し続けている。「自分がよいと思ったものを広く伝える」ということの進化系がここにある──。

電子書籍のつくり手として、豊富な実績をもち、さらにITメディアの分野を切り拓いている斉藤。しかし、じつは22世紀アートに入社するまで、書籍や出版、ITについての知識は少ないほうだったという。現在の出版業界に入る前、15年間にわたって音楽業界に身を置いていたというのだ。

22世紀アートで仕事をすることで、自分の原点となる想いに立ち返ることになったという斉藤。そんな彼が、新たな価値としてこの先、描いているものはなにか。それは、かつて身を置いた音楽の世界とリンクさせつつ、出版業界に新たな価値観を生むものかもしれない。

 私は、「自費出版」、「商業出版」という、出版費用をどこがもつかで区分けされている風潮を払拭したい。本来のコンテンツの価値は、中身にあるにもかかわらず、費用負担先が先にフォーカスされてしまっています。そのためにもまずは、「つくっておしまい」とされていた自費出版イメージの脱却をすべくクオリティにこだわり続けます。

 たとえば音楽業界でいうところの“インディーズ”という市場があります。昔は「インディーズから作品を出している」というと、「えっ? メジャーじゃないんだ」という反応でした。ステータスが低かったんです。でも、いまやメジャーに負けない存在感を放っています。むしろ、メジャーから作品を出すのは、ちょっとカッコ悪いぐらいのイメージにさえなっています。

 出版業界でも、そんな変革を起こしたい。この先、「あ、自費出版なんですね。カッコいいですね!」なんていわれるレベルにまでクオリティを高めていければ、業界への新たな刺激にもなっていくと思いますから。

“自費出版”のイメージを変える。
音楽における“インディーズ”のように

斉藤 孝之(さいとう たかゆき)
斉藤 孝之(さいとう たかゆき)
斉藤 孝之(さいとう たかゆき)
プロフィール

1973年、茨城県生まれ。音楽業界を経て、株式会社22世紀アートのビジネスモデルに共感し入社。現在、執行役員・出版制作部部長として制作部門を支えている。

株式会社22世紀アート 取締役副社長・出版企画部 部長 海野 有見 / 執行役員・制作部部長 斉藤 孝之 / 執行役員・出版企画部 野沢 光昭株式会社22世紀アート 取締役副社長・出版企画部 部長 海野 有見 / 執行役員・制作部部長 斉藤 孝之 / 執行役員・出版企画部 野沢 光昭

書籍に本来の価値と評価を与え
作家さまとともに
未来を創造していく仕事です

電子書籍にして再び出版することで、
作品も、作家さまの人生も変わっていきます
出版プロデューサー
株式会社22世紀アート
執行役員・出版企画部
野沢 光昭

電子書籍のメリットを最大限に活かし、かつて紙の本として自費出版された作品に新たな価値を与えて世に送り出す、22世紀アートの出版事業。そこには、作家に真摯に向きあい、「作品をひとりでも多くの人に知らせたい」という社員の想いがある。たくさんの作家とかかわっていくなかで、その純粋な想いに触れてきたからこそ、湧きあがる仕事のモチベーション。作家へ著書の電子書籍化を提案する野沢も、その高まりを日々感じているひとりである。


出版企画部の野沢のおもな仕事は、過去に出版された作品の電子書籍化を作家に提案すること。彼の提案を受けることによって、作家が自身の活動をいっそう楽しめるようになったという事例は多い。紙の本を出したときに思うような結果が出なかった作り手の意欲を再び活性化させ、作品に新たな命を吹き込むことができるのも、22世紀アートの仕事の価値。そうした作家のひとりを、野沢に紹介してもらった。

 元教員で、趣味の海外旅行を題材にした本を自費出版されていた方がいらっしゃったんです。国立国会図書館で書籍を見つけて「おもしろそうだな」と思いました。

 さっそく読んでみると、内容も文章もすごくおもしろくて。そこで市場調査を行ったのですが、自費出版ということでPRが不足しており、売れ行きはかんばしくないようでした。そこで、著者の方に「ぜひ当社で電子書籍にしましょう。効果的なプロモーションさえ行えば、これは広まりますよ。すごくおもしろかったですし、タイミングがいいですから」と連絡をしたのです。当時、日本へのインバウンドの流行とともに、日本人の海外旅行ブームの再燃を感じていたので、自信はありました。

 当初、ご本人は電子書籍がどういうものか、あまりご存じなく、当社のサービスの特徴である「無期限の出版」と「印税率50%」に対し、「そのようないい話があるのか?」と、半信半疑のご様子でした。たまたま近くに出張の予定があった機会に、直接お会いして、収益化までの話も含めてご説明しました。結果、ご納得いただき、出版に向けて二人三脚の道のりがスタートしました。

 出版にいたるまでは、なんどかやりとりをして、スムーズにいきました。結果としては、2年ほどで出資金を回収し、利益が出るようになりました。著者の方も含めて旅行好きの方が集まるブログのグループがあり、そこからPRについてご協力いただけたのがポイントだったと思います。「趣味の話を自分で書いて、電子書籍としてリーズナブルに出版できて、そのうえお金も稼げる」と、とても満足していただけたので、私もホッとしました。

 作家さまが出版を決意するのには、さまざまな理由があります。そのなかでも、「書きたいことを書いて売りたい」というのは、最上級に難しいテーマです。私たちは最大限、尽力しますが、厳しい結果になることもしばしばです。しかし、私はあきらめません。当社には、作家さまと協力しながらできる無料の宣伝ノウハウがたくさんあります。半永久的に売り続けることは、無料で販促活動ができなければ成立しませんから。宣伝を続ければ、結果、目標に到達することもありますし、目標を変更して、それを追求していくこともあります。

出版企画部の野沢のおもな仕事は、過去に出版された作品の電子書籍化を作家に提案すること。彼の提案を受けることによって、作家が自身の活動をいっそう楽しめるようになったという事例は多い。紙の本を出したときに思うような結果が出なかった作り手の意欲を再び活性化させ、作品に新たな命を吹き込むことができるのも、22世紀アートの仕事の価値。そうした作家のひとりを、野沢に紹介してもらった。

紙の書籍による自費出版時には生まれなかった売上が、電子書籍化によって得られる。そこに、22世紀アートの強みがある。“売れる本”にするために、電子書籍での再出版に際して、どのようなアプローチを行ったのだろうか。

 電子書籍の場合は、Webプロモーションが効果的です。一般的な成功例としては、ブロガーやインフルエンサーを活用したマーケティングが有効です。ただ、費用がかかってしまったり、とくにその書籍を応援してくださる方を探さなければいけなかったりするのが難点。また当社の場合、幅の広いジャンルの出版を行っていますので、すべての書籍を平等にプロモーションするとなると、それだけでは不十分です。

 そこで社会問題にフォーカスした自社ニュースサイト『SOCIO』を使った宣伝方法を考案しました。私たちの作家さまは、作家としては自費出版作家かもしれませんが、職業や研究においては、なにかしらのプロなのです。そこで、作家さまに各専門家の立場からのご意見を頂戴し、あわせて書籍のプロモーションを行うという仕組みです。ここで書かれた記事は、400もの他社メディアに向けてプレスリリース配信して、さらなる拡散をはかっています。

 もうひとつ効果的といえるのは、じつは、書籍のタイトルです。Amazonなどのオンライン書店では、リアルな書店とは比較にならないほどの書籍数を取りあつかっています。ですので、読者に検索してもらわなければなりません。当社の場合は、書籍のタイトルやサブタイトルに、興味関心をもたれるであろう読者の検索ワードをリサーチして、盛り込むようにしています。自然流入率の向上は、電子書籍の販売においては最強の宣伝方法といえます。

紙の書籍による自費出版時には生まれなかった売上が、電子書籍化によって得られる。そこに、22世紀アートの強みがある。“売れる本”にするために、電子書籍での再出版に際して、どのようなアプローチを行ったのだろうか。

出版プロデューサーとして、より多くの読者を開拓したいという想い。書籍の認知を広げる効果的なプロモーションだけでなく、いっそう読まれるものにするために、電子書籍化する際、従来の本に改善の手をくわえることもあるという。

 タイトル、サブタイトルだけでなく、表紙を変更することもあります。自費出版書籍に対しては、「低クオリティ」「素人」「つまらない」などのネガティブイメージがありますので、それらを感じさせない商業出版書籍レベルの表紙を制作することも大切です。当初の作品に強い愛着やこだわりをおもちの作家さまもおられるので、安易に変えるのではなく、底本をアップデートするイメージです。この際、事前に作家さまが大事にしたいことや出版の目的としてどこに重点をおくかなどをヒアリングすることも非常に重要なことです。

 また、書籍商品ページにたどりついた読者に対して、書籍の魅力をできる限り伝えるべく、概要にくわえて、出版社からのコメントや目次などを記載しています。

出版プロデューサーとして、より多くの読者を開拓したいという想い。書籍の認知を広げる効果的なプロモーションだけでなく、いっそう読まれるものにするために、電子書籍化する際、従来の本に改善の手をくわえることもあるという。

野沢の仕事ぶりは、まさに「電子書籍づくりの職人」というおもむきだが、じつはこの業界に入る前は、建設資材の営業職というまったく別の世界で仕事をしていた。資材の営業は、他社との価格競争による顧客の奪いあいになりがちで、自身の努力が報われないことも多かったという。そんな悩みが増していたなかで、彼に転機が訪れた。

 「値下げ合戦の営業で疲弊するばかりで、仕事の未来が見えてこない」。そう思っていたときに、当社代表の向田から「うちで営業をやってみないか」と誘われたんです。

 ほうっておいたら本来の価値や評価が得られないものが、当社のビジネスモデルにはめこむことで、それが得られるようになる。つまり、当社の電子書籍化のノウハウによって、本が新たな価値を手にすることができる。「作家さまと一緒に未来をつくっていける仕事だな」と思い、22世紀アートに参加しました。

 私がこの会社に入って最初に担当した作家さまのことは、いまでもよくおぼえています。ご自身が続けてこられた短歌を題材にした電子書籍の企画でした。ただ、その方はずっと、自費出版という形態をネガティブにとらえていて、ややおよび腰になっておられたんです。ところが、いざできあがって電子書籍になったあと、とても喜んでくださって。「印税というものをもらったのは初めてだ」と感激しておられました。

 短歌にずっと情熱をそそいでこられて、それが出版というカタチになって、わずかな額ではありましたが、印税というものになって返ってきた。ご自身にとって、これまで積み上げてきたものが認められたという喜びを、出版によって強く感じることができた、ということでした。自分自身の仕事のやりがいとしても、とても心に残るものになりましたね。

野沢の仕事ぶりは、まさに「電子書籍づくりの職人」というおもむきだが、じつはこの業界に入る前は、建設資材の営業職というまったく別の世界で仕事をしていた。資材の営業は、他社との価格競争による顧客の奪いあいになりがちで、自身の努力が報われないことも多かったという。そんな悩みが増していたなかで、彼に転機が訪れた。

作家の想いにこたえ、作品に新たな価値を与えるビジネスとして、22世紀アートの出版事業は今後も成長が期待されている。未来を創造する同社のサービスを手がけながら、野沢は今後、仕事人としてなにをめざすのか。

 電子書籍にして再び出版することで、大げさに言うと、作家さまの人生が変わることもあります。だれからも認識されなかったものを、新たなひとつのコンテンツとして生まれ変わらせることのやりがいは、ほかには代えがたいものがあると感じます。

 今後は、このサービスをもっと多くの作家さまやクリエイターの方に伝えていきたい。自分自身、営業というよりもコンサルタントといった立ち位置になって、出版ビジネスの新しい可能性について探りながら、ノウハウを増やしていければいいなと思っています。

紙ではまったく売れなかった本でも
電子化するとヒットするケースがあるんです

野沢 光昭(のざわ みつあき)
野沢 光昭(のざわ みつあき)
野沢 光昭(のざわ みつあき)
プロフィール

1981年、埼玉県生まれ。株式会社22世紀アートのビジネスモデルに共感し入社。初めて経験する出版業界にもかかわらず、営業職としてメキメキ頭角をあらわした。現在は執行役員として、会社の成長戦略の推進に貢献し続けている。

事業所概要

社名 株式会社22世紀アート
所在地 東京都中央区日本橋浜町3-23-1 ACN日本橋リバーサイドビル5階
URL https://www.22art.net/

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