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オジデザインワークス株式会社 代表取締役社長 橋本 亮介オジデザインワークス株式会社 代表取締役社長 橋本 亮介

僕は自分の作りたいものなんてない。
求められているものにいかに応えるかが、
モチベーションのすべてと言っていい。

提供するのはデザインではなく、ブランディング。
マーケティングの観点で想いを形にすることです。
オジデザインワークス株式会社
代表取締役社長
橋本 亮介

良いデザインというものの本質は何か。個々の感性でその良し悪しが判断される世界の中で、共通して測れる尺度があるとすれば、それはデザイナーのアプローチによって、顧客にどんな成果がもたらされたかという視点だろう。オジデザインワークスを率いる橋本氏は「デザインの強みをいかにビジネスに活用できるか」にこだわり、リアルな成果を常に追求してきた稀有なクリエーターである。


クライアントのビジネスに貢献するブランディングこそがデザインの役割だと語る

商業空間のインテリアデザインのスペシャリストとして活躍する橋本氏。ただ、提供する仕事はデザイナーとしての一面的なものではない。設計や建築、インテリアコーディネート、ロゴマークのグラフィックデザインからWebデザイン、ユニフォームといった総合的なアプローチを提供している。

 私たちの仕事は、一面的なデザイン領域だけでは語れません。商業空間を表現していくための、総合的なブランディングというアプローチの手法にこだわりを持ってきました。たとえば腕のいい料理人の人が、「自分は包丁使いが上手い」「鍋の火入れに自信がある」なんて言わないでしょう。伝えるのは「美味しいものが出せる」というただ一点。私たちも同じで、インテリアデザインができる、設計に自信がある、といったことじゃない。「いいモノを作れる」「流行る店を出せる」という最終成果をいかに説けるかが大事なんです。 

 私たちは、空間デザインを最初の企画の段階からチームでシェアしながら詰めていきます。そのプロセスは密に話を組んでいかなければ精度が上がりません。だから外に出すのではなく、自社内で完結することが必要。それによって、お客さんが入る、売れる空間を提供することに徹底的にこだわっているんです。

商業空間のインテリアデザインのスペシャリストとして活躍する橋本氏。ただ、提供する仕事はデザイナーとしての一面的なものではない。設計や建築、インテリアコーディネート、ロゴマークのグラフィックデザインからWebデザイン、ユニフォームといった総合的なアプローチを提供している。
各分野のプロフェッショナルと綿密な打ち合わせを重ねてデザインを進める
社内のデザイナーと常に情報共有できる体制が、最良のデザインを届ける秘訣

人を集められる空間をつくること。それをデザイナーが社会に貢献できる活躍の仕方だと考えて、橋本氏は仕事をしてきた。なかでも、社会に不可欠な医療や介護の分野に注力してきたことが、オジデザインワークスとしての矜持のひとつ。歯科・医科クリニックの空間デザインには創業以来300件超の実績があり、業界の第一人者としての自負がある。

 いまは歯科業界でも、開業する際にはデザイナーを入れるのが当然になりました。デザイン性に優れたクリニックが増え、スタッフの方々も気持ちよく働けるようになったと思います。私たちが商業空間のデザインで重視しているものに、働く人の満足度、つまりESに重きを置いている点があります。

 デザインアプローチによってクリニック空間の質を上げ、ESを生み出すとともに、採用を円滑にする成果を導きます。それまで採用に苦労していたのが、デザインを一新したら応募が一気に増えたというクリニックは数えきれないほどありますね。

 スタッフの士気を上げるためにも、空間デザインのもつ役割は大きいのです。ロゴマークやユニフォームなどのデザインが一体感を生んで、「さあ頑張ろう!」という空気の醸成が生まれる。そうなると、必ずそのクリニックや店舗はうまくいきます。

 また、デザインを変えて集患や集客が一気に増え、売り上げが倍になったというクリニックやお店も多々あります。まさに新たなデザインがもたらした成果であり、それが私たちの目指すところですね。

人を集められる空間をつくること。それをデザイナーが社会に貢献できる活躍の仕方だと考えて、橋本氏は仕事をしてきた。なかでも、社会に不可欠な医療や介護の分野に注力してきたことが、オジデザインワークスとしての矜持のひとつ。歯科・医科クリニックの空間デザインには創業以来300件超の実績があり、業界の第一人者としての自負がある。
社内に用意したプレゼンテーションルーム。クライアントとデザインの方向性を話し合う際に使用する
ユニフォームや名刺のデザインも提案する。空間を構成する全てのアイテムの一体感が全体のデザイン価値を上げる

良いデザインを提供する…という漠然とした目的よりも、明確な成果を目指し、それを実現してきたことが、橋本氏が多くの顧客の満足を得てきた理由だろう。採用や集客の面で、確固たる結果を導くデザインを生み出す裏には、どのような想いが息づいているのか。

 「自分はこう表現したい」という、自身の作風を優先するデザイナーは少なくありません。でも実は、デザインの源泉というものは社会にあると私は思っているんです。自分の好みは関係なく、それは時代が変われば違うし、買う人や使う人が変わればガラリと変わるもの。デザインとは役者のようなもので、配役はもちろん、舞台やシチュエーションによって変わっていくものであるべきなんですね。

 だから、提供しているのはデザインというよりも、あくまでもブランディング。芸術家といった考え方で自分の世界観を形にするのではなく、マーケティングの観点でお客様の描くビジョンに寄り添ったデザインをすることです。

 だから、お客様とのヒアリングの機会は何よりも大事です。お客さんがなぜそうしたいと思うのか。意図や、思いの奥にあるものを聞き出して、それを表現していくことが重要。その過程では私たちがお客様自身の思考になって物事をとらえていく。その人にどれだけなり切ることができるか。それが確かな成果を導くブランディングにつながっていくんです。

 言い換えれば、僕は自分の作りたいものなんてまったくない。求められるものにいかに応えるかが、モチベーションのすべてと言っていい。だから、こうやってネクタイ締めてちゃんと打ち合わせをして、お客様のいろんな想いやニーズを聞いていくことに力を注ぎます。仲間の中でも「変わってる」「デザイナーっぽくない」って思われることも多いですよ(笑)。

良いデザインを提供する…という漠然とした目的よりも、明確な成果を目指し、それを実現してきたことが、橋本氏が多くの顧客の満足を得てきた理由だろう。採用や集客の面で、確固たる結果を導くデザインを生み出す裏には、どのような想いが息づいているのか。
デザインは手書きで行う。このポリシーは新人時代から変わらない。
時代が求めるデザインを追求するため日々研鑽を積む

デザインは時代によって違い、求められるものも異なる。自分の思いよりも、世の中が何を求めているかによってどうあるべきかが決まっていく。それを自分で表現できるのが、必要とされるデザイナー像だと橋本氏はいう。そうした理念を抱くことになったきっかけとは何か――。

 たくさんのいい出逢いに恵まれたことが大きかったですね。デザインの師である原兆英先生、原成光先生。仕事を通じて、アートディレクターの佐藤卓さん、いろんな優れたクリエーターに会うなかでも大きな刺激を受けたのが、株式会社アマナの進藤博信社長との出会いでした。進藤社長は元々、とってもセンスの良いカメラマンという立場から、上場企業の社長にまでに成り、クリエイティブの力で大きな組織を創り上げた。まさに私にとって驚くべき人物でした。

 当時、まだ駆け出しのデザイナーだった私は、自分のいろんなこだわりのなかでデザインを提案していたんですが、そこで言われたんです。「これからはマツキヨだよ」と。

 その頃、薬局という従来のイメージを一新したのが、マツモトキヨシの斬新なロゴマークであり、空間デザインでした。それまで、きれいでおさまりのいい、自分の価値観を表現したものこそ良い、と思っていたのが、「いかに型にはまった考え方をしていたのか…」と気付かされ、ハッとさせられました。

 時代や消費者が求めているものは何か。それを大胆な空間デザインやロゴマークによって表現し、社会にインパクトを与えたブランディングの形が目の前にあったのです。デザインのもつ可能性の大きさを感じさせられた意味でも、大きな言葉だったと今も思っています。

デザインは時代によって違い、求められるものも異なる。自分の思いよりも、世の中が何を求めているかによってどうあるべきかが決まっていく。それを自分で表現できるのが、必要とされるデザイナー像だと橋本氏はいう。そうした理念を抱くことになったきっかけとは何か――。
これらの道具でこだわりのデザインを生み出してきた。一つひとつにデザインに対する想いがこもっている
オジデザインワークスにはクライアントのことを想った「マーケティングマインドのあるデザイナー」が集まる

2017年、オジデザインワークスが中国・北京にデザイン設計した大型健康複合施設「Sunny Bay」が、北米照明学会照明賞という世界的に権威のある賞を受けた。複数の異なる施設が共存する空間で、それぞれの機能性や特性をとらえ、魅力を引き出す橋本氏のブランディング手法が高い評価を受けた結果だった。

 こうした海外の案件など、医療・介護の施設を含めて、大規模なデザインやブランディングの仕事がいま増えつつあります。時代を先取りして、自らニーズを生み出すような新たな挑戦をこれからも意欲的に続けていきたいと思いますね。

 私達が手がける商業空間のデザインは、単に建築や設計、インテリアといった要素だけで成り立っているわけではありません。経済を知っていること、商売を理解していること、もちろん人の暮らしや生活感も大きく関わっています。多様な接点のなかでデザインをとらえていく視点が絶対に欠かせないのです。

 社会や生活に関する様々な要素を学んだデザイナーが生まれることで、世の中を変えていくデザインが生まれる可能性もいっそう高まるはず。デザイナーの活躍が、社会の活力を生み出す原動力になれるよう、つねに次の時代を見据えていきたいですね。

デザインが一体感をつくり、
「さあ頑張ろう!」という空気が生まれる。
そうなると、必ずそのお店はうまくいきます

北京にある大型健康複合施設「Sunny Bay」。インテリア、エクステリア、照明計画などのデザインを手がけ、世界的に権威のある賞を受賞した。オジデザインワークスには海外からもデザイン依頼が増えている
「Sunny Bay」にあるスポーツジム。施設内にはレストランやスパもあり、多くの利用者がオジデザインワークスのデザインにふれている
橋本 亮介(はしもと りょうすけ)
橋本 亮介(はしもと りょうすけ)
橋本 亮介(はしもと りょうすけ)
プロフィール

1973年生まれ。原兆英、原成光、両氏に師事。インテリアデザインから建築デザイン、グラフィック、コーディネートを学んだあと、2002年からオジデザインワークスとしての活動を開始。2004年にオジデザインワークス株式会社を設立して代表取締役に就任した。商業施設のブランディングを目的としての活動を勢力的に行い、とくに歯科・医科クリニックの空間デザインに注力。現在、建築家やインテリアデザイナー、グラフィックデザイナー、Webデザイナー、スタイリスト、コーディネーターのチームアプローチによるイメージ戦略、商業施設のブランドコンサルとしてデザイン活動を行う。また各業界の商業施設デザイン・ブランドに関する講演活動やデザイン学校の講師なども務めるなど幅広く活躍している。

【デザイン賞受賞歴】
• JCD デザインアワード 2006 新人賞受賞 [cafe elable]
• JCD デザインアワード 2007 Best 100 [sa ra ku]
• JCD デザインアワード 2007 Best 100 [numazu-kou]
• 第18回 BEST STORE OF THE YEAR 2010 優秀賞受賞
• IES Illumination Awards / Illumination Award for Interior Lighting Design / Award of Merit
  2017年 北米照明学会照明賞 インテリア照明設計賞(部門佳作)受賞

事業所概要

社名 オジデザインワークス株式会社
住所 東京都港区高輪1-7-11白金高輪ビル
コーポレートサイト http://www.ozidesignworks.com
医科専門サイト http://www.medical-design.info
歯科専門サイト http://www.dental-design.jp